今回はリゼロ49話の解説を、ネタバレを控えて原作や作者のtwitterなどを参考に行います。
アニメ未視聴の場合は、先にご覧になってから読んで下さいね。
それでは解説に移ります。
冒頭の氷の塔と、ロズワールについて

墓所から出たエミリアが目撃したのは、聖域に吹雪が吹き荒れる光景。
しかし住民たちは、パックが四方に作っておいた氷壁のおかげで吹雪から守られていました。
彼らの無事を確かめたエミリアは、パックが作ったと思われる氷の塔を発見します。

アニメでは説明されませんでしたが、この塔はエミリアを誘導するためにパックが作ったものです。
ーー豪雪にけぶる視界の彼方、白く染まる森に氷でできた塔がそびえ立っている。
今、この瞬間に顕現した氷の塔、それはエミリアを誘い、呼び寄せるための目印だ。
『まだ、リアの仕事は残ってるはずでしょ?』
そんな、ずっと傍にあり続けてくれた家族の声が聞こえた気がして、奥歯を強く噛む。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p170より
そして住民たちに無事でいるよう伝え、見送られてエミリアは塔に向かいました。
続いてラムに叡智の書を燃やされたことで、茫然自失となったロズワールのシーンです。

この時のラムの想いが変貌したことへの無理解と困惑が、原作では表現されています。
ロズワールにとって、ラムは都合のいい、使える手駒だった。能力も精神面も申し分なく、何より、望みがロズワールへの復讐心であるところが完璧だった。
彼女にならば、自分の最期を預けていいと、本気で思っていたのだ。
それを裏切られた。ーー予想だにしない形、予想だにしない理由で。
「ラム、何故、君は……」
変わろうとしたのか。想いが形を変えていたのか、理解ができない。
全ての想いは、その想いが最も強く輝いた瞬間から、そのままで在り続けるべきだ。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p171~172より

ロズワールは人の想いは変わらない(恋心は始めから恋心でなければ芽生えない)と信じています。だから、彼女の変化が受け入れられないんですね。
そして、これで脅威は去ったかと思われました。
しかしロズワールは、前もって水晶に雪雲を呼ぶ術式を刻んでいたことが判明。
戦いの最中も術を展開していたので、実はロズワールは全力ではなかったことになります。

その後、ロズワールは半ば無意識にラムを回復しようとします。
彼は回復魔法を使うことができないため、ラムが鬼の血に負けないよう長年続けてきた「マナを流し込む」という行為で代用しようとしました。
すでに呼吸音の消えたラム、その額に、半ば習慣のようにロズワールは触れた。
何か、考えがあってのことではない。
ただ、ラムの命を繋ぐためには、ラム自身の持つ鬼の生命力に賭けるしかないことを、無意識にロズワールは理解していた。
ラムは生きていなくてはならないのだ。
彼女がロズワールの終わりなのだ。自分の最期は、彼女の手でもたらされなければならない。目的を達するために。目的を達した、そのあとのために。ーー生きて。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p175~176より
そして道しるべを失い途方に暮れる彼の絶望の声で、このシーンは終了です。
魔水晶の前のシーンについて

氷の塔を目印に施設へたどり着いたエミリアが見たのは、魔水晶の前にいるシーマとたくさんのリューズでした。
エミリアはその状況で皆を墓所に連れて行けばいいか尋ねると、帰ってきたのが「呆れたな。この状況を見て、それが最初に出てくるのか」という言葉。
ここで多くの方が

あれ?エキドナの声じゃない?どゆこと?
と思ったはず。
これについては来週わかると思いますが、少しだけヒントを出しておきますね。
ミニアニメ『Re:ゼロから始める休憩時間』2nd season #23にて、エミリアとの茶会をあり得ないと否定したエキドナ。
しかし、セクメトが「無いとは言い切れない、それは自分でわかっているはずだ」という旨のことを言います。
その後エキドナは「これから起きる様々な可能性のことで頭がいっぱいなのさ」と、魔女たちに話しました。


彼女がもともと何の研究をしていたか、を思い出しておくとよいかもです。
ヒントはここまで、詳しくは最終回までお待ちください。
続いてシーマの語る「役目」について、要約すると以下のようになります。
- エミリアの破壊した術式だけでなく、魔水晶も機能を失わないと結界は解かれない
- 聖域の代表人格に与えられた役目は「結界解放の鍵」であり、魔水晶と共に消えることにある
エミリアは彼女の覚悟を聞いて、止めずに最期を見届ける決心をします。
そして彼女はパックの入った魔水晶の欠片をエミリアに渡した後、リューズ・メイエルの魔水晶と共に消えてしまいました。
吹雪に包まれているロズワール達と、多兎の襲来について

リューズ達の案内によって、ロズワール達を発見したエミリア。
しかし茫然自失となっているロズワールは「もう、いい……」と、全てを諦めようとします。
エミリアは彼を説得しようと試みますが、途中で最後の壁である三大魔獣の一角・多兎がやってきました。

彼らの生態として膨大なマナに惹かれるという特徴を持つため、パックの魔水晶を持ち彼女自身も強大な魔法使いであるエミリアめがけて殺到します。
そしてリューズ達にロズワールを託して、エミリアは囮としてその場を離れました。
ベアトリスの独白について

ヘクトールの襲撃は、リューズによる聖域の確立によって防がれました。
しかしエキドナは自身の知識が完全に失われることを危惧し、ベアトリスに来るべき時まで書庫を守り続けるよう言います。
原作でのベアトリスのセリフは以下の通り(赤字はカット部分)。
「ま、さか……ベティーの、力は……このときの、ために?」
「お母様は、最初からこうなるって……だとしたら、禁書庫なんて場所だけじゃなくて、せ、『聖域』のことも……ロズワールと、リューズのことも……っ」
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p192~193より
エキドナが『叡智の書』のことを自身の「権能」だと言ったことから、未来の出来事は知っていたはず。
だから自身の知識を受け継ぐ相手として、ベアトリスを作ったのでしょう。
最後に『叡智の書』の複製品を渡した後、エキドナは彼女の前に二度と姿を現すことはありませんでした。

この後エキドナは、嫉妬の魔女に飲み込まれたということになりますね。
そしてエキドナが去った後、ロズワールが禁書庫を訪ねてくるようになったことが語られます。

この時のロズワールのセリフ「魂を、複製し……器に、上書きして……」は、かなり重大な伏線です。

察しの良い方なら、今のロズワールがどうしてエキドナに惹かれたままなのかわかるはず…。
その後ロズワール・A・メイザースは亡くなり、ロズワール・B・メイザースに役目が引き継がれたことが語られました。

真ん中の名前はアルファベット順になっているので、現在のLは12代目ということですね。

ちなみにBメイザースの声優さんは「子安光樹」さんで、ロズワール役「子安武人」さんの息子さんだそうですよ。
ただ、以降のロズワールとベアトリスがまた絆を育むことはなかったようです。
書庫にたどり着いたロズワール邸外部の人たちも、彼女を解放することはできませんでした。
そんな彼女も、パックとの再会には心が弾んだとのこと。

ここは原作を引用して補足しておきますね。
パックは、ベアトリスと出自を同じくする大精霊だ。しかし、彼は魔女エキドナと袂を分かち、『聖域』が生まれるよりずっと前に別れ、それきりだった。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p198より
要約するとパックもエキドナに作られた人工精霊ですが、エキドナとは何らかの理由で決別したとのこと。
けれど役目を果たせる彼に負い目を感じたベアトリスは、エミリアに感情をぶつけないように彼女を避けて過ごすようになります。
そんな日々を送っていた彼女の前に現れたのが、異物であるスバル。
スバルの、書庫の知識・ベアトリスの精霊としての力の両方に興味がない姿勢から、少しだけ彼女の心は揺らいだようです。
原作では希望を抱き、それを自身で否定する様子が書かれています。
ーー知識にも、ベアトリスの力にも、さしたる興味を抱かない少年。
これまで禁書庫に辿り着いた誰とも異なる在り方に、ベアトリスは儚い希望を抱きそうになり
ーーしかし、これを自ら否定し、打ち消した。
そもそも少年には、ベアトリスが待ち人に期待する多くの要素が欠落している。
まず、目つきが悪い。態度も悪い。教養も足りていないし、足も短い。全力で想っている相手がいるし、ベアトリスにも優しくない。いいところが見当たらないではないか。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p200より

否定する要素の、ほとんどが悪口ですが…
そして聖域に行くとロズワールが言い出したことから彼が決着をつけにいくのだと悟り、『その人』が決して訪れないと理解します。
その後屋敷に戻ってきたスバルに大きな期待を寄せますが、47話でスバルは自分は『その人』でないと否定しました。
それを受けてスバルを書庫から追い出してから、以下のように繋がるわけですね。
危うく、取り返しのつかないところになるところだった。
ーー自分が、ひどく安っぽい、軽薄な道化に成り下がった気分だ。
「……もう、疲れたかしら」
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p203より
再度の禁書庫への進入と崩壊

何度も吹き飛ばされながらも、禁書庫へたどり着くスバル。
自分が何度もここに辿り着けたことが、ベアトリスが本気で拒絶していないことの証明だと宣言します。
そしてスバルのセリフがアニメにもあった、以下の通り。
「俺は、お前の『その人』なんかじゃない」「でも」
「俺は、お前と一緒にいてやりたいよ、ベアトリス」「優しいお前が、悲しくないように、傍にいてやりたいよ」
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p209~210より
しかし突如として禁書庫が歪み、スバルはベアトリスの空間跳躍によってまたしても追い出されてしまいます。
これは恐らく彼女の精神状態が不安定になったからでしょう。

ここは、ベアトリスの作り出した禁書庫。ーーこの書庫の状況が、ベアトリスの精神状態に左右されるのだとしたら、それが維持できないほどに、彼女は。
「ベアトリスーー!」
歪む世界の中、スバルは懸命に立ち上がり、ベアトリスに手を伸ばした。
ーー瞬間、紙を破くように空間が千切れ、スバルの体はその切れ目に呑み込まれる。
『扉渡り』と違い、扉を介さない空間跳躍ーー以前、同じことをされたことがある。エミリアを死なせたときと、ベアトリスを死なせたときに。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p211より
追い出されたスバルは諦めずに、再度彼女を探すことにしました。
「俺を選べ」ースバルとベアトリスの契約

スバルが屋敷を走り回って見つけた最後の扉。
「この扉を開けたら、俺はたぶん死ぬ」と言ったのは、扉を開けることでバックドラフト現象が起きることを予期したからですね。
そして、スバルはもう一度禁書庫へたどり着きました。

彼がベアトリスと再会し、彼女に賭けた言葉は自分を助けてくれというもの。
十分な力を備えたベアトリスの助けにはなれないので、彼女を一人にしたくない自分ができることは頼み込むことだけだ、と言います。

主人公らしくかっこよく決めるのではなく、等身大の言葉を紡ぐのもスバルの魅力だと筆者は思います。
しかし、また置いて行かれることにおびえるベアトリス。
ここからのセリフはリゼロの名シーンの一つなので、筆者が語るよりもう一度見て下さい。
「でも、俺はお前と明日、手を繋いでいてやれる」「だから、ベアトリス。ーー俺を、選べ」
「お、まえは……『その人』じゃ……」
「ない。俺をそんな、お前が思い描いていた他の男と一緒にすんな。四百年の、顔も知らない野郎への片思いなんて、全部忘れちまえ」
「永遠を生きるお前にとって、俺と一緒に過ごす時間なんて刹那の一瞬かもしれない。なら、お前の魂に刻み込んでやるよ。俺の一瞬を」「ーーナツキ・スバルって男が、永遠って時間の中でもセピア色にならないぐらい、鮮烈な男だったんだってことを!」
「俺を選べ!ベアトリス!!」「ーー誰かに外に連れ出してほしいから!お前はいつも!扉の前に座ってたんじゃないのか!!」
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p227~230より

このシーンの言葉だと、やっぱり最後の口説き文句が最高ですね!
そうしてベアトリスは本を手放し、二人の間に精霊と術師の契約が結ばれました。
EDと最終決戦地へ

屋敷が崩壊した場面を見たオットーは諦めかけますが、ペトラに殴られて夜空を見上げます(痛そう…)。
すると空には、スバルとベアトリスの陰魔法による飛行の光が輝いていました。
そのままベアトリスがスバルの名前を初めて呼ぶ描写が入り、最終決戦地となる墓所へ。
多兎を前に苦戦中のエミリアの後ろに光と共に着地する様は、やっぱ安心感が違います。
「ーーそんな無理しなくても大丈夫だよ、エミリアたん」
隣を見る。吹雪が強すぎて、その誰かの顔が見えない。だけど、少女にはそれが誰なのかはっきりとわかった。
声も、態度も、そして何よりーー一番いてほしいときに、きてくれないはずがない。
「あとは任せて、下がっててもいいぜ。ーー初陣補正があるからね」
「ごめん。ちょっと何言ってるのかわかんない」
苦笑する気配が前に出る。その人影はすぐ傍に、小さな別の人影を連れていた。それはずっとずっと、このときを待ち望んでいたように弾む声でーー。
「もう、どうなっても知らないのよ」
「ああ、どうにかしてやろうぜ。ーー俺と、お前で!!」
ーー精霊ベアトリスと契約者ナツキ・スバルの、これから何度も何度も手を繋ぎながら戦っていくことになる二人の、初陣の火蓋が切って落とされた。
Re:ゼロから始める異世界生活 15巻 p239より
そして二人が手を繋いでいるシーンで、今回は終了となりました。


来週はクライマックス!ベアトリスの真の実力や多兎戦など、見どころがたくさんの回になりそうです。
まとめ
今回で、物語が一気に終幕に向けて動き出しました。
実は一部カットされた部分もありますが、本編にほぼ影響がないのと、ベアトリスの演出が良すぎたので文句は無いです。
これだけの出来だと、3期にも期待したくなりますね。
50話の解説も行っているので、そちらもよろしければご覧下さい。
今回はここまで。
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